反復強迫抵抗。

精神分析の言葉だ。どんな非生産的な人生を送る人も、それぞれにみな自助努力をし、一時は上手くいきかける。その人生の変わり目の時に、無意識からの強い抵抗に合い、それまでの努力を水泡に帰すような、どんでん返しを演じたり、そのような出来事が起こって、もとの木阿弥にしてしまうことがよくある。上手くいかない人生を送る人は、そんなことを繰り返しながら、年を重ねる。

それほどに人は「変わりたくない」生き物だ。それを精神分析では、最も扱いにくい、困難な課題と言っている。

実際の話、それを乗り越えられる人は少ない。人からの救いの手があっても、それを掴める人と、自らその手を離してしまう人がいる。それはその人の選んだ運命であり、誰にも如何ともし難い。

カウンセラー・セラピストが、たとえ細心の注意を払っていても、本人が変わることを心底望まない限り、それが援助の限界だ。誰も人の人生を支配することはできない。良くなって欲しいと思うこともまた、セラピストの側の欲求だ。

長い経験の中で、無事乗り越えたケースもある。乗り越えられず去っていった人もいる。それはその人の選択であり、致し方のないことだ。会えなくなったその人の幸せを、心秘かに祈りながら、そのことに一喜一憂せず、私たちは次の仕事に挑まなくてはならない。

わかっていても生身の心は無傷ではない。過酷な仕事だ、と思う。それでも20年やってきたが…私も年だ。いつになく疲れを覚える。

限界を知ることは、むしろ継続していくための、重要な課題の一つであると痛感する、老いの迫った体。

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落合美沙

落合美沙

代表理事一般社団法人日本イーブンハート協会
一般社団法人日本イーブンハート協会 代表理事 イーブンハートスクール校長 心理カウンセラー、フィトセラピスト、アートセラピスト イベントプロデューサー