最近とみにカウンセリングをしながら思うこと。

人は、他者との関わりを鏡にして、自分が何者かを知る生き物だ。他者との関わりが薄いと、自分のアイデンティティもわからなくなる。コミュニケーションが苦手な人が増えた。それが自己喪失感に繋がることが多い。人はそもそも社会性の動物として進化してきた。その大切な本能の部分が、侵されている気がしてならない。何故、いつからこうなってしまったのだろう?

私自身もかなり変わった子どもで、集団には馴染めなかった。しかし私たちの子どもの時分は、一人で過ごせるバリエーションが少なかった。生まれつきそれが苦手な性質の子どもは昔からいたのだろうが、一人でいると時間を持て余してしまったり、親を含めて地域の関わりが深く、苦手でも訓練されるところが多かった気がする。

今では、ゲーム、ビデオ、ネット環境など、リアルな人との関わりがなくても、何時間でも過ごせてしまう。いざ社会に出る段になって、その問題が表面化する。社会性を身につけるべき子ども時代に、周りの大人が適切に介入しないと、それを育ててやることが難しくなった。加えて親世代も他人との付き合いが薄かったりすると、どうやって人とコミュニケーションを取るのか教えてやれず、放っておかれることになりがちだ。

発達障がいなどで、元々他者との繋がりを必要としない子どもでも、周囲の温かい働きかけで、人と一緒にいたり、自分のことをわかってもらえるのは楽しい、と思う気持ちは育てられる。

子どもへのアプローチと同時に、親世代へのコミュニケーション教育も必要になってきたのではないか?それは鶏と卵の関係で、どちらにも援助が必要に思う。

ただでさえ少子化で労働人口の減少するこれからの時代、コミュニケーションが取れなくては、生産活動を営むのが難しく、個人が社会の中で自立して生きることもできにくくなり、ひいては日本の経済の根幹を揺るがすことにもなるだろう。そのことにどれくらいの人が、危機感を覚えているのだろうか?

経済成長はコミュニティーを分断する。物を多く売るために、皆で共有していたものを、個々人で所有するように仕向ける。風呂は一家に一つ、テレビは一人に一台、そうすると人は集わなくなる。貧困化に向かうこれからの時代に、再び一つのものを他者と共有し、分かち合い、助け合って暮らせば、難しい世の中を生き延びていけるのではないだろうか?

ホモ・サピエンスは、共同で暮らしを営むことで、進化を勝ち取ってきたのだ。それが人が生きることの根源だ。失われたコミュニティーの再構築、それが私たちの協会、「まちサポ」事業の願いだ。

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落合美沙

落合美沙

代表理事一般社団法人日本イーブンハート協会
一般社団法人日本イーブンハート協会 代表理事 イーブンハートスクール校長 心理カウンセラー、フィトセラピスト、アートセラピスト イベントプロデューサー