赤ちゃん先生に学ぶ。

産まれて1カ月余り、この頃の赤ちゃんはまだ快体験のバリエーションがごく少なく、不快を感じても自分ではまだ何が起きているのかわからない。非常に混沌とした世界にいる。一つだけわかっているのは、おっぱいは快だということだ。

勢い、わけのわからない不快が訪れると、理由は何でもとにかく「おっぱいくれ〜!」となる。でも必ずしもお腹が空いている訳ではないので、飲み過ぎて吐いたりする。これは赤ちゃんなら正常なよくある反応だが…

これ、いわば「過食嘔吐」の状態だ。

摂食障害の大多数に、境界性人格障害が隠れていると言われる。人格障害の原因はまだよくわかっていない部分も多いが、一つの説に、対象関係論にいわゆる「分離再接近期」、1歳過ぎから3歳前後の自我の芽生えの時期に、親など周囲の人たちとの基本的な信頼関係の損なわれる体験があったからだとも言われている。

この頃に何らかのストレス状態に置かれると、「退行」つまり赤ちゃん返りを起こす。それに周囲が気づいて、十分付き合ってあげれば、子どもは順調な発達の状態に戻るが、その時期の未発達が解消されず、抑圧されたまま、思春期から成人に至ると、境界性人格障害などを起こす原因となることがある。

摂食障害は、その退行状態が無意識下に残り、得体の知れない不安が摂食の異常に置き換えられた形ではなかろうか?

根本的な治療とは、本来3歳頃までに確立されるべき基本的信頼関係を「育て直す」ことだが、これはほぼ不可能に近い。境界例の人たちは無限に依存を求め、人を試し、振り回すが、大人になってしまった彼らを、赤ちゃんのように四六時中世話をすることは誰にもできない。それが回復を非常に困難にしている。

親御さんがそのことに気づかれ、信頼関係の再構築に覚悟を決めて必死で取り組まれたり、また心の安定した懐の深いパートナーに恵まれて、嵐のような彼らの揺れ動く心を受け止めて、年数をかけて付き合ってもらえたりすると、年齢と共に少しずつ落ち着いてくることもある。

うちのクライエントの例でも、そうした周囲の尽力的なサポートと、またサポートする家族を支えるプロの援助がしっかり協力体制を作れていると回復を見るが、これは相当に難しいことで、終結に至らず中断するのは、家族との関係が改善できないケースだ。

本来なら産まれてからほんの4〜5年くらいの間に、円満な関係を作り、しっかりと子どもの葛藤に付き合っておけば、こんなに長い年月本人も周りも苦労しないで済むものを…。しかしそれができなかった親の方にも大抵は深い事情があり、誰にも責めることはできない。だから本当に必要なのは、親が良い心理状態や環境で子どもを育てるためのソーシャルサポートだと痛感する。

小さい子どもを育てるお母さんをこんなに孤独にする薄情な国は、先進国のみならず途上国を含めても日本くらいなものだ。保育園ができるとうるさいからと言って反対したり、泣き叫ぶ子どもに眉をひそめる大人たち、男は仕事だけしていれば良いと洗脳して家庭から夫を奪う産業構造、他人の親子には口出ししない風潮、それらが子どもの健全な育ちを阻害している。

もっと私たちはお節介な他者になろうではないか。子どもを守るためには、その親である大人を守り、温かい社会を創ることが、何より重要ではなかろうか?

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落合美沙

落合美沙

代表理事一般社団法人日本イーブンハート協会
一般社団法人日本イーブンハート協会 代表理事 イーブンハートスクール校長 心理カウンセラー、フィトセラピスト、アートセラピスト イベントプロデューサー
落合美沙

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